リーダーシップ構築体験談
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リーダーシップとは? | リーダーシップとは、役職や権力を意味するものではなく、「影響力」の事である。
企業や団体におけるリーダーシップについて話すとき、管理職のことを示している場合が多いと思います。しかし、リーダーシップと管理職はイコールの関係ではなく、役職がついたからと言って自動的に得られるものではありません。逆にいうと、役職や権力がなくとも、リーダーシップは取れますし、個人がそれぞれ自分のリーダーシップ持っているべきとも言えます。
時には、カリスマ性のある人をリーダーシップのある人と表現することもありますが、人の性格などでリーダーシップの有無が決まるわけではなりません。例えば、人前に出ることが苦手な人であっても、その人なりのリーダーシップをとることは可能です。個人の性格は、変えようと思って変えられるものではないのに対して、リーダーシップ「スキル」というくらいですから、性格に関わらずリーダーシップは学習すれば身に着けることのできるものです。
マネージメントとリーダーシップは同等のように述べられることもありますが、似て非なる物です。マネージャーはタスクを管理する役割であり、リーダーは人を導きます。リーダーに部下は必要ありませんが、目的を達成するための仲間は必要です。 リーダーシップには一つの正解の形があるわけではなく、色々な形・方法があり、時によってそれは変化します。そして、影響力を行使する際には、必ず目的・ゴール・アウトカムがあることが前提です。 | |
| リーダーシップが何かわかると、自分のありかた(Being)を考えるきっかけになってくると思います。そして、自分のリーダーシップが何かわかってくると、対人関係においての自分の距離の取り方や自分の意見をどこまで貫くか、どのように伝えるかなど、自らの行動の指針を知ることができます。
自分で意識的にリーダーシップをとっていかないと、受け身の体制でいることをよしとしてしまいがちですが、自分のリーダーシップを発揮することで能動的に行動することができます。受け身でいると、自分らしさを発揮できなかったり、(言われたことに対して)不満を感じたりするでしょう。ですから、逆に自ら進んで(能動的に)行動することで、自分の想いを伝えたり、希望を叶えることができるようになります。
また、自分が行動することで、周囲に影響を与えるのがリーダーシップですから、自分だけの成長・変化ではなく、周りの人、コミュニティ、社会における変化にも与える存在になることができます。自分の価値をあげていくことが出来るのです。 | |
リーダーシップについて初めて考えさせらた時の事 | 私が日本で仕事をしていた時、月300時間以上働いていました。管理職だという責任感から、会社から言われたことをこなす毎日でしたが、これではいけないと思い、マネージメントを学ぶつもりで米国の「Leadership Institute」と名の付く大学院に進学することを決心しました。学部は社会経験のある人向けで、留学生は私だけ。授業を受けて覚えるだけの受け身の勉強ではなく、クラスでのディスカッションとプロジェクトでのリーダーシップを求められる環境でした。 | |
| 留学生の私が積極的にディスカッションに参加する事だけでも厳しいのに、リーダーシップと言われても、正直当時の私には、それが何を示すのかわっていませんでした。いわゆる一般的なリーダーシップのイメージ「皆の先頭に立って自信満々に、自分の想いを熱く語り、主張の強いアメリカ人たちを束ねていく」のは自分にはできないと思ったので、私にはリーダーシップが取れないのではないかと悩んでいました。 | |
| とりあえず単位をとるためには、最低でもクラスで発言する必要がありました。もともと内向的な性格の私は、多くの人の前で話すことが日本語でも苦手です。それなのに、英語で自分の意見を言うというのは、私にとっては大変な事でした。初めは、頷いたりして行動で意思表示する程度からスタートし、何か意見を聞かれたら、少しずつ発言するようにしていきました。 | |
| 幸いにも、何人かの親しい友人ができると、私のつたない英語でも理解してくれるという安心感を得ることができ、自分から発言できるようになっていきました。それからは、ほかのクラスメイトや教授陣も、私のアクセントにも慣れ、私の発言を理解しようとしてくれるようになりました。このような話しやすい環境を得たことで、自分の考えを伝えることができるようになり、ディスカッションへの参加もできるようになりました。 | |
| しかし、私のクラスでの存在は、留学生だから「話を聞いて(面倒を見て)あげなければいけない人」だったように思います。当時のクラスメイトで、現在の親友に言わせれば、そんなことはない!と言ってくれるのですが、自分に自信がなかったので、リーダーシップを発揮するのなんてほど遠い状況でした。 | |
自分にとってのリーダーシップ | 授業で学ぶにつれ、リーダーシップというのは一つの形でない事は理解していましたが、それでも「皆の先頭に立って自分の想いを熱く語り、周りの人を束ねていく」イメージが強く、それは私のスタイルではないと感じていました。そのため、自分にとってのリーダーシップとは何かを定義する必要がありました。 | |
| パーソナルリーダーシップのモデル | |
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この図に合わせて以下の例を見ていくと、図表上で、どこに位置するのか、どのように自分のスタンス(自分の主張と人間関係)のバランスをとっていく必要が分かると思います。 · 周りに反対されようとも、成し遂げたいということは何か? · 自己主張の塊でよいのか、周りに受け入れてもらうためには、どういうことなら譲っても良いのか? · 自分の意見を押し殺しても、周りに合わせて上手く関係を繕っていくのがよいのか? | |
取り組み その 1 | 自分にとってのリーダーシップの定義を明確にする。 良い・悪いではなく、違う価値観がある事を理解してもらう。
相手に、そのスタンスを伝える。 · リーダーシップの定義を説明し、私は皆と違うアプローチだという事を認識してらう。 · 自分と違うからと言って、あり得ない形・悪い物と判断せず、違うスタイルだと認識してもらう。
そのスタイルを示す為の行動を起こす。 · 皆が認識しやすいように、私の行動を説明していく。 例)発言しないのは、意見がないわけでない。他の人の発言を「聞いている」のであり、私が発言するときは、皆も同様に私の意見を聞く環境を作って欲しい、と説明する。 · 皆に、「違う事」をRemindしRecognizeさせる。 価値観軸:自分はどうしたいのか。何を伝えたいのかをはっきりさせる。 まずは、リーダーシップの定義(自分の意見・価値観)を確立する。 · リーダーシップとは影響を与えることのできる人 · おとなしい人がリーダーシップをとれないわけではない。 · 皆とは違う自分の存在・影響の意味を考え、ダイバーシティの価値(いろいろなリーダーシップスタイルがある事)を主張。
人間関係軸:自分がどのように、人と付き合っていきたいのかをはっきりさせる。 · 人とつながりたい。クラスメイトに本当の自分を知ってもらいたい。相手に誤解されたくない。表面だけ上手くやっていく関係を良としたくない。 · 人に認めてもらいたい(共感・評価してもらいたい)。 私が目指したのは: · 自分の意見を主張しつつ、周りとの関係を強めていく。 *緑のところが希望する領域 *黒いところはあり得ない領域
気づいたことは: · どんなに強い想いがあったとしても、必ずしも全員がそれに同意してくれない。 *黄色い領域 · 分かり合える人とそうでない人がいる現実。
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| この図解に当てはめることで、自分のスタンスや状況を理解することができました。 | |
取り組み その 2 | 次にしたことは、私のリーダーシップスタイルを権力ある人(教授)認めてもらい、評価してもらうことでした。
自分の意見を主張しつつ、周りとの関係を強めていきたかったのですが、分かり合えない人もいる現実にぶつかりました。そのうちの一人が、担当教授でした。 詳細は省きますが、ダイバーシティの観点から言うと「彼女が信じることだけが、唯一の答えではない」ということに意見したのです。 | |
| 人との結びつきを考える時、それは人数だけの問題ではなく「どういう人」との関係かを考慮する必要があります。言い方を変えるなら、敵に回してしまう人(人数や権力)を考えて、時には自分の主張を調整していくことも必要だという事です。
自分の意見が100%、全ての人に受け入られることないのが現実ですから、譲歩出来る所とそうでない所を見極める能力が必要だと思い知らされました。 | |
取り組みの結果 | 結果として、私が皆と違う価値観、行動基準を持っていることは、教授を含む大多数の人にわかってもらえたと思います。発言しないと思われていた、おとなしい留学生が、教授に面と向かって反論したのですから、私の主張は注目を浴びました。この件があってからは、相変わらず発言することは少なくとも、私のことを「おとなしい人」と思うクラスメイトはいなくなったようで、逆に「沈黙には力がある」と言われるようになったほどでした。
また、自分の主張を「個人のワガママ」ではなく、ダイバーシティの意味や、システム(大学院という組織)として「異なるもの」にどう対応するかのレベルで、影響与えることができたと思っています。 | |
私が得たことは、自分のリーダーシップの形を見つけたこと。それに伴い、自分の行動基準・自信を持つことができたこと。(きちんとリーダーシップを発揮し、大学院を卒業できました!)
そして、信頼できる仲間を得たことです。入学当初は面倒見てあげなければいけない留学生だったのに、卒業後は、大学院の講師の採用面接に関わったり、元クラスメイトや教授とのビジネスパートナーシップを築くことができました。 | ||
さらなる課題 | とはいえ、人間関係を壊しても大丈夫と思えるほどのリスクをとれる環境は、大学院という学習の場であったから可能だったのであり、なかなか通常ではありえません。私を知っている友人には、反論覚悟で強い意見を言うこともできますが、初対面の人には難しいです。
しかし、批判や拒絶されることを恐れたり、自分の意見を過小評価してしまうと、発揮するべきリーダーシップ力に支障がでてしまいます。 | |
1つ確かなのは、「発言する事には意味がある」という事です。自分の中で思っているだけでは、周りには伝わりません。自分から、まず行動を起こす必要があります。そうすることで、何等かの変化は必ず起きます。 | ||
読者の皆様へ | · 自分が周りから浮いている。 · 自分の意見が、受け入れてもらいにくい状況にいる。 · 自分らしさを封じ込めて、他人に合わせてばかりの生活をしている。 こんな状況にいるのであれば、まずは、自分の意見(何を伝えたいか、どうしたいか)を持って、行動にうつしてみませんか? | |
まずは、人と違って良いってことを良しとする、図々しさを身に着ける勇気を持ちましょう。 「出る杭は打たれる」なんて諺がありますが、右に倣えを良しとする風潮は、今変わりつつあるのではないでしょうか?就職にしても昇進にしても、常識的であることは求められますが、「あなただから出来ること」も同様に求められているように思います。人間関係でも、和を重んじる所はありますが、100%常に他人に合わせる必要はありません。
自分の意見が固まったら、それがどうして、自分にとって大切なのか周りに説明できるようになりましょう。そして、理解してくれる仲間を見つけましょう。みんながすぐに理解してくれるとは限りませんが、行動に移すことで何かは変わってくるはずです。
自分にとって大切な事は何かを知り、仲間たちと一緒に何かを成し遂げるのは、やりがいを感じるでしょうし、楽しいはずです。それができた時、必ずあなたのリーダーシップが発揮されている事でしょう。 | ||
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